長崎初優勝の得点構造——
外国籍と日本人、その貢献比率が示すもの
スタッツから読む「誰が勝たせたか」——育成論からの再検証
- 01長崎の外国籍選手(ジョンソン・イ ヒョンジュン・ブラントリー)が得点の約70%を担い、出場分数でも同水準——「外国籍主体の優勝」という事実を数字で示す
- 02ファイナル賞の馬場雄大が13.3得点・1.7スティールで代表クラスの活躍——「得点以外で勝利に貢献した日本人」の役割を定量化しにくい要素として提示
- 03Bプレミアで外国籍4名同時出場が解禁されれば日本人のプレータイムがさらに圧縮される可能性——長崎モデルが「代表育成のロールモデル」になれるかを問う
2025-26シーズン、長崎ヴェルカがBリーグ参入5年目で初優勝を果たした。CS MVP はイ ヒョンジュン(外国籍)、ファイナル賞は馬場雄大(日本人)——この二つの賞が物語るように、長崎の優勝は単純に「外国籍頼み」とも「日本人の活躍」とも断じ難い構造を持つ。得点・出場分数のデータを外国籍と日本人に分けて整理し、「誰が勝たせたか」という問いではなく、「どんな比率だったか」という事実を数字で示す。そしてその比率が、Bプレミア×日本代表強化の文脈で何を問いかけるかを考える。
2025-26 長崎ヴェルカ ロスター概要
外国籍5名・日本人11名、その編成の特徴
2025-26シーズンの長崎ヴェルカは、外国籍5名・日本人11名(計16名)で構成された。外国籍の核となったのは3選手——スタンリー・ジョンソン(元NBAドラフト8位指名、22.8点/試合)、イ ヒョンジュン(Bリーグアジア特別賞・47.9%の3P成功率で17.4点)、ジャレル・ブラントリー(16.0点・高アシスト率)——だ。
日本人では馬場雄大(元NBA挑戦・12.3点・27.8分)が最多得点で中心的役割を担い、熊谷航(25.0分・5.2点)がコートの「つなぎ役」として機能した。山口颯斗(21.1分・5.4点)もローテーションに食い込んだ。
チーム得点91.2点/試合はリーグトップ。この得点をどの選手が稼いだかを、外国籍・日本人の軸で可視化する。
得点貢献の比率——数字で示す
合計得点・出場分数を外国籍/日本人に分けて整理する
| 選手 | 区分 | 出場試合 | 平均出場時間 | 平均得点 |
|---|---|---|---|---|
| スタンリー・ジョンソン | 外国籍 | 57 | 28.6分 | 22.8点 |
| イ ヒョンジュン | 外国籍 | 57 | 29.7分 | 17.4点 |
| ジャレル・ブラントリー | 外国籍 | 57 | 29.1分 | 16.0点 |
| 馬場 雄大 | 日本人 | 57 | 27.8分 | 12.3点 |
| アキル・ミッチェル | 外国籍 | 55 | 22.1分 | 8.3点 |
| ミッチェル・ライトフット | 外国籍 | 40 | 13.3分 | 5.9点 |
| 山口 颯斗 | 日本人 | 55 | 21.1分 | 5.4点 |
| 熊谷 航 | 日本人 | 57 | 25.0分 | 5.2点 |
| 川真田 紘也 | 日本人 | 35 | 6.5分 | 3.0点 |
| 狩俣 昌也 | 日本人 | 48 | 8.4分 | 1.9点 |
| 森田 雄次 | 日本人 | 38 | 5.0分 | 1.9点 |
| 松本 健児リオン | 日本人 | 43 | 8.8分 | 1.8点 |
| 星川 堅信 | 日本人 | 42 | 7.1分 | 1.7点 |
| 菅野 翔太 | 日本人 | 12 | 2.4分 | 1.1点 |
| 田中 流嘉州 | 日本人 | 30 | 5.8分 | 0.5点 |
| 菅澤 紀行 | 日本人 | 50 | 8.9分 | 0.0点 |
※ PPG・MPGはBLEAGUE INSIDER独自集計(2025-26レギュラーシーズン)。イ ヒョンジュン・スタンリー・ジョンソンはアジア特別枠扱いで外国籍カテゴリに計上。
得点ベースでは外国籍選手の貢献比率が約7割に達し、出場分数でも同水準だ。ただし、この数字を「外国籍主体で勝った」と短絡的に断じる前に、もう一歩踏み込む必要がある。
「比率が高い」と「頼り切り」は違う
馬場雄大という存在が示すもの
長崎の外国籍得点比率が高い事実は認めた上で、「だから日本人は機能していなかった」という結論は正確ではない。日本人最多得点の馬場雄大(12.3点・27.8分)は、ファイナル賞を受賞した。ファイナル3試合の成績は平均13.3点・3.3リバウンド・2.7アシスト・1.7スティールで、琉球の起点を潰すディフェンダーとしての役割がなければチームの勝利はなかったと評価されている。
「何がなんでも勝ちたかった。長崎のみんながいてくれたから優勝できました」
馬場の存在が示すのは、「得点を何点取ったか」だけでは計れない日本人選手の貢献だ。ディフェンス強度・コートビジョン・チームの精神的支柱——これらはボックススコアに現れにくいが、チームの勝敗を左右する。熊谷航(173cm)がリバウンドに飛び込む姿がGAME3で光ったように、日本人選手の「役割特化型の貢献」が外国籍の得点力を生かす土台を作っていた。
一方で正直に認めなければならないのは、長崎の得点の約7割が外国籍から生まれていたことは数字上の事実であり、「外国籍なしには生まれなかった優勝だった」という評価は否定できない、ということだ。問うべきは「悪い/良い」ではなく、「この比率はB1全体と比べてどの程度異なるか」「それがBプレミアで加速するとどうなるか」だ。
B1平均との比較——長崎は特異か、典型か
リーグ全体の外国籍出場時間は13.3分 vs 日本人の24.1分
このシリーズの前稿(#01)で触れた通り、2025-26シーズンのB1全体では外国籍選手の平均出場時間は24.1分、日本人選手は13.3分だ。チーム全体の総出場分数(約240分/試合)で見ると、外国籍が全体の約50〜55%を占める。長崎の場合は外国籍5名の合計出場分数が103分超と、平均よりも高い比率で外国籍が起用されていた。
| 指標 | B1リーグ平均 | 長崎ヴェルカ | 差異 |
|---|---|---|---|
| 外国籍平均出場時間 | 24.1分/人 | 26.6分/人(5名) | 外国籍はやや多め |
| 日本人平均出場時間 | 13.3分/人 | 10.8分/人(11名) | 日本人はやや少なめ |
| チーム得点 | 〜80点台(B1中位) | 91.2点(リーグ1位) | 得点力は突出 |
| 外国籍得点構成比(推計) | 約55〜60% | 約70% | 外国籍依存度が高め |
長崎はB1平均と比べて外国籍への依存度が高めだが、他の上位クラブも外国籍の比重が大きいのが現実だ。宇都宮はD.J・ニュービル(MVP)という最高の外国籍を核とし、群馬・シーホース三河も外国籍がスコアリングの中核を担っている。長崎の比率が「異常値」かというと、そこまでではない——「上位にいるほど外国籍の質と量が高くなる」という傾向の中で、長崎は最上位に位置しているということだ。
日本人選手にとって、この優勝は何を意味するか
育成の視点から問いを立てる
長崎の優勝は日本人選手にとって何を意味するか——2つの異なる解釈が成立する。
馬場雄大は元NBA選手として、世界水準の動き・フィジカルを知った上で長崎に来た。熊谷航はスタンリー・ジョンソンの隣でプレーすることで、自分の役割と強みを高速で学んだ。「高い外国籍と競争する日常」が、日本人選手を代表レベルへ引き上げる環境として機能した可能性がある。
長崎の日本人選手(馬場を除く)の平均出場時間は10〜11分程度だ。若手・中堅の選手が限られたプレータイムでどう成長するかは未知数だ。「試合で育つ」ためには出場機会が必要で、外国籍の比重が高まるほどその機会は圧縮される。Bプレミアでさらに外国籍が増えれば、この傾向は加速する。
「外国籍と日本人、どちらが勝たせたかというよりも、「このチームで日本人選手は次のステップへ成長できたか」を問う方が建設的だ」
馬場雄大(元NBA)・熊谷航・山口颯斗のような選手が「外国籍と戦う中で育つ」ルートを歩んでいる一方で、10分未満の出場に留まる若手の成長曲線がどう描かれるかは、今後のシーズンでしか評価できない。長崎の優勝は「日本バスケの今」の縮図であり、その縮図が「未来の代表強化」にとって良いシグナルなのか警戒すべきシグナルなのかは、まだ結論が出ていない問いだ。
Bプレミアで加速する「比率問題」
2026-27、同時出場4名時代に長崎モデルはどう変わるか
2026-27シーズンのBプレミアでは、外国籍の同時出場が最大4名になる。長崎が現行の強みを維持しようとすれば、外国籍4名を同時起用するシステムを選択しうる。その場合、日本人選手の出場分数はさらに圧縮される可能性がある。
一方で、外国籍4名同時出場は「全チームが選択する」わけではない。キャップ制(Bプレミアは8億円)の中で外国籍4名の高年俸を支払いながら勝利するには財務的な強さが必要だ。長崎は2024-25決算で営業損失があった構造上、高コストモデルをどう維持するかは未知数だ。外国籍の出場機会が増えるルールが施行されても、「実際に活用できるクラブ」は限られる可能性がある。
長崎の初優勝はBリーグ史に残る快挙だ。その得点構造を読んで浮かぶのは「外国籍と日本人が共存する勝ちパターン」の一つの形だ。しかしその形が「日本代表強化に最適か」という問いは、まだ答えが出ていない。スタンリー・ジョンソンが点を取り、馬場雄大が守り、熊谷航がコートをつなぐ——この分業は美しくコンパクトだが、「次世代の河村勇輝を産み出す土壌」になるかどうかは、Bプレミア移行後の数年が教えてくれるだろう。
このシリーズでは「Bプレミアの制度変更が日本代表強化にどう影響するか」を多角的に検証します。断定ではなく問いを立て、データで追跡し続けます。