10季とも黒字だったのは、1クラブだけだった
「赤字13クラブ」を、10年の中に置き直す
- 012025-26のB1・B2で当期純損失は40クラブ中13。赤字率33%は10季平均39%を下回り、下から3番目
- 026季以上の決算がある36クラブのうち、一度も赤字にならなかったのはレバンガ北海道だけ。18クラブは3〜5季、7クラブは6季以上が赤字
- 03今季の13クラブも均質ではない。6季以上赤字が4、たまに赤字が6、決算が6季に満たないクラブが3
- 04赤字率を決めているのは「収入の伸び − 費用の伸び」で、相関は−0.68(9季)。10季のうち収入が費用を上回ったのは2023-24だけで、その季の赤字率は13%
- 05B1・B2の債務超過クラブは2022-23の6から2023-24以降は0。赤字と債務超過は別の話
- 06⚠️ 慢性的に赤字のクラブ名は出していない。リーグが季ごとに公開しているものを10季ぶん集計して順位にする必要がないため
リーグの決算発表に「赤字クラブ:13クラブ」という行がある。 数だけが出るので、多いのか少ないのか分からない。
この記事は、その13を10年の中に置き直すためのものだ。置いてみると、赤字という言葉で思い浮かべるものとは、かなり違う景色になる。
13という数を、10年の中に置く
まず比率にする。2025-26のB1・B2は40クラブで、 当期純損失が13。赤字率は33%になる。
10季ぶん並べると、赤字率は13%から56%のあいだを動いていて、 平均は39%だった。今季の33%は平均より低く、10季のなかで下から3番目になる。リーグが発足した2016-17でさえ36%で、いまより高い。
図1当期純損失になったクラブの割合(B1+B2、%)
点線が10季の平均39%。 コロナで興行が止まった季に跳ね上がり、そのあと下がってきていることを見てほしい。
- 区分は決算の季のもの。B3(いまのB.NEXT)は2024年度からしか載らないので外してある
- クラブ数は36から40に増えている。割合で見ているので、増えたぶんの影響は小さい
- 決算期がシーズンと一致しないクラブがある(リーグの注記)
つまり13という数は、悪化した結果ではない。では、何なのか。もう少し中へ入る。
10季とも黒字は、1クラブしかなかった
割合ではなく、クラブごとに10年ぶんを縦に見る。 6季以上の決算がある36クラブについて、何季が赤字だったかを数えた。
図2赤字だった季の数(6季以上の決算がある36クラブ)
いちばん左が「一度も赤字が無い」。そこに1クラブしかいないことを見てほしい。
- クラブによって載っている季の数が違う(最大10季)。6季未満のクラブは分母から外している
- B2からB1へ、またはその逆に動いたクラブも、同じクラブとして通して数えている
一度も赤字にならなかったのはレバンガ北海道の1クラブだけ。10季すべてで当期純利益を出している。 逆にいえば、残りの35クラブはどこかで赤字を経験している。
赤字は、一部のクラブに起きている例外ではない。この10年のB.LEAGUEでは、ほぼ全員が通る道だった。
ところが、13の中身は3つに割れる
ここまでで「赤字は珍しくない」が分かった。ただ、それを根拠に「だから気にしなくていい」と書くのは乱暴だ。同じ赤字でも、毎年そうなっているのと、今季だけそうなったのは違う。
今季の13クラブを、過去の決算で分けた。
- ⚠️ クラブ名は出していない。リーグは季ごとの赤字クラブ名を発表資料で公開しているので、こちらで10季ぶんを集計して順位の形にする必要がない
- 「6季以上が赤字」は、決算が載っている季のうち6季以上という意味。載っていない季は数えていない
13のうち、構造的に見えるのは4。残りは今季たまたまそうだったクラブと、判断の材料がまだ無いクラブになる。 リーグの発表の「13クラブ」という1行は、この3つを足したものだ。
赤字率を決めているのは、収入と費用のどちらが速いか
では、赤字率は何で動くのか。 収入が増えれば下がるはずだが、10季のあいだ収入はずっと増えている。 それでも赤字率は下がっていない。
答えは引き算にあった。「収入の伸び − 費用の伸び」と赤字率の相関は-0.68。収入が費用より速く伸びた季は赤字が減り、費用のほうが速い季は増える。 当たり前に聞こえるが、ここで効くのはこの差がほとんどゼロのまま推移していることだ。
図3収入の伸びと費用の伸びの差(ポイント)と、赤字クラブの割合(%)
棒が「収入の伸び − 費用の伸び」。上に出れば収入のほうが速い。 折れ線が赤字率。棒が上に出た季だけ、線が落ちているのが見どころ。
- 相関係数は-0.68(9季)。⚠️ 9季しかないので、係数の精度は高くない
- 2本の軸の目盛りは違う。棒はポイント、線は%で、同じ高さが同じ値を意味しない
- 相関は「一緒に動いている」ことしか言わない。ただしここは定義からして連動する関係にある
10季のうち、収入が費用をはっきり上回ったのは2023-24の1季だけ(収入+32.8%に対して費用+22.3%)。 この季の赤字率は13%まで落ちた。 ほかの季は、ほぼ並走している。クラブは、稼いだ分だけ使っている。だから収入が5.6倍になっても、赤字率は下がらない。
債務超過は0になった。赤字とは別の話
最後に、混ざりやすいものを分けておく。赤字(当期純損失)と債務超過は、違う。赤字はその年の損益で、債務超過は積み上がった結果だ。 1年の赤字で会社が傾くわけではない。
リーグの発表資料によれば、B1・B2の債務超過クラブは 2022-23の6から、2023-24以降は0で推移している。 赤字率が50%あった2022-23に6あったものが、 赤字率33%の今季には無い。
つまり「赤字13クラブ」は、 体力が尽きかけているクラブが13あるという意味ではない。この10年でいちばん効いた変化は、赤字が減ったことではなく、 債務超過が消えたことのほうだろう。
筆者の見立て — 伸びている業界の赤字は、止まった業界の赤字と違う
ここからは見立てになる。 収入と費用がほぼ同じ速さで伸び続けているのは、各クラブが毎年「来年のために使う」判断をしているということだ。 アリーナ、演出、人、ユース。使えば、その年の損益は悪くなる。
止まった市場で費用が収入を上回っていれば、それは危険な兆候になる。 ⚠️ ただしこの10年のB.LEAGUEは、収入が5.6倍になった市場だ。同じ「赤字」という語でも、意味がかなり違う。 B2の記事 で見たように、増えた収入の半分近くが興行への投資に向かっている季もある。
⚠️ これは「赤字でいい」という話ではない。 6季以上赤字が続いている4クラブについては、投資の局面という説明が効かなくなる。同じ数字を、同じ理由で説明してはいけない。それを見分けるには、1年の損益ではなく、10年の形を見る必要がある。
確かめられていないこと
- ⚠️ 「投資だから赤字」は見立てで、確かめていない。費用の中身が投資なのか、単に高いのかは、リーグの様式からは分からない
- ⚠️ 相関-0.68は9季しかない。係数の精度は高くない
- 決算期がシーズンと一致しないクラブがある。赤字かどうかの判定も、その分だけ季とずれる
- クラブ数が10季で36から40に増えている。入れ替わったクラブのぶんは、割合で見ても完全には消せない
- 営業収入の範囲はクラブによって違う(アリーナを同じ法人で運営しているか、別法人か、借りているか)。損益の比較にも、その違いが入る
- 決算期がシーズンと一致しないクラブがある(A東京・東京SR・川崎・三河・FE名古屋・名古屋D・大阪・島根・長崎)。人件費と戦績の期間は厳密には揃っていない
- 人件費はトップチームぶんのみ。スクールやアリーナを別法人で運営しているクラブは、その分が入らない
- 物販収入と原価は、クラブごとに販売方法と会計処理が違うため単純比較できない(リーグの注記)
- 「その他」にはアリーナ事業などの収入が入る。リーグはこれを「夢のアリーナ効果による増加」として、伸びた要因に数えている
- 表示項目はリーグの統一様式で、クラブの決算書の勘定科目とは異なることがある。端数調整で合計が一致しない箇所がある(リーグの注記)
次に見るなら、どこか
来季の決算が出たら、赤字クラブの数ではなく、 「収入の伸び − 費用の伸び」を見てほしい。ここがプラスに振れた季は、リーグが投資から回収の局面へ移ったということになる。 2023-24に一度それが起きて、また戻っている。
出典:B.LEAGUE クラブ決算概要(2016-17〜2025-26シーズンの各季)/同 発表資料(2025-26シーズン、債務超過クラブ数)。