LAB/RESEARCH/MERCHANDISE
決算クラブ経営物販入場者数2026.10.19

物販は10倍になった。人が増えた分は、そのうち4割だけ

10季の物販収入を、来場者数と1人あたりに割る

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SUMMARYこの記事のポイント
  • 01B1+B2の物販収入は6.2億円から64.0億円へ10.32倍。営業収入全体は5.62倍なので、ほぼ倍の速さで伸びた
  • 02収入の構成比で10年間にシェアを上げたのは物販だけ(4.1%→7.6%)。入場料もスポンサーも割合は下がっている
  • 0310.32倍を割ると、来場者が2.33倍、1人あたりが4.43倍。対数でみた寄与は人数36%・単価64%で、単価のほうが効いている
  • 04リーグ公表の入場者1人あたり物販は288円→1,174円(4.08倍)。こちらの計算とも整合する
  • 05ただしクラブ別の差が大きい。宇都宮ブレックスは1人あたり5,118円で、いちばん低いクラブの16倍
  • 06⚠️ コロナの2季は入場者が落ちた分1人あたりが跳ねて見える。2020-21の1,192円はそれ
  • 07⚠️ リーグは「物販」の定義を公表していない。対になる費用科目が「グッズ販売原価」なのでグッズ売上と読めるが、飲食の科目は無く、どこに入るか分からない
  • 08⚠️ アリーナ事業を別法人で行うクラブ(仙台・群馬・琉球・横浜EX・八王子など)は、その分がこの表に入っていない

Tシャツとタオルの話をする。 B1+B2の物販収入は、2016-17の6.2億円から2025-26の64億円へ10.32倍になった。

同じ10年でリーグ全体の営業収入は5.62倍。物販は、ほぼ倍の速さで伸びている。

10年でシェアを上げたのは、物販だけだった

収入の柱は4つある。入場料、スポンサー、物販、その他。 このうち構成比を上げたのは物販だけだ。4.1%から7.6%へ、ほぼ倍になった。 入場料もスポンサーも、額は増えているが割合では下がっている。

図1物販収入と、営業収入に占める割合(B1+B2)

棒が物販収入(億円)、右の数字が営業収入に占める割合。 2022-23から棒の伸び方が変わっているところを見てほしい。

2016-176.2億4.1%
2017-189.6億4.9%
2018-1912.7億5.8%
2019-2013.7億6.1%
2020-2114.3億5.9%
2021-2215.9億5.3%
2022-2325.1億6%
2023-2438.5億7%
2024-2550.1億7.7%
2025-2664億7.6%
指標物販収入 — グッズやアパレルの販売による収入(億円)。割合は 物販収入 ÷ 営業収入
対象2016-17 〜 2025-26・B1とB2の36〜40クラブ
備考
  • 区分は決算の季のもの。B3(いまのB.NEXT)は2024年度からしか載らないので外してある
  • 物販収入と原価は、クラブごとに販売方法と会計処理が違うため単純比較できない(リーグの注記)

この構成比の話は 10年の成長の記事 でも触れた。そこでは「4つの柱がだいたい同じ速さで太くなった」と書いている。その例外が物販だった、というのがこの記事の話になる。

10倍を割ると、人数が2.33倍で単価が4.43倍

なぜ物販だけが速かったのか。物販収入は「来た人の数 × 1人が落とす額」に割れる。どちらが効いたかは、割ってみれば分かる。

来場者はこの10年で2,260,000人から5,257,849人へ2.33倍になった。 物販の10.32倍をこれで割ると、1人あたりは4.43倍。 掛け算の寄与を対数で分けると、人数が36%、 単価が64%になる。

リーグも同じことを出している。発表資料の「入場者単価」は入場料と物販の合計だが、 そのうち物販分は288円から1174円へ4.08倍。 こちらの計算(274円 → 1217円)とも、おおむね合う。

図2入場者1人あたりの物販収入(B1+B2、円)

物販収入 ÷ リーグ全体の入場者数。 ⚠️ 灰色の帯はコロナで入場が制限された季で、分母が落ちた分単価が跳ねて見える。 そこを除いた線の傾きを見てほしい。

03006009001200入場が制限された季274円1217円16-1719-2022-2325-26縦軸:1人あたりの物販(円)横軸:シーズン
指標1人あたりの物販 — 物販収入の合計 ÷ リーグ全体の入場者数(円)
対象2016-17 〜 2025-26
備考
  • ⚠️ 2020-21・2021-22は入場が制限されていて、分母が小さい。1192円という値は、売れたからではなく人が入れなかったから高く出ている
  • リーグ公表の入場者単価(入場料+物販)とは計算が違う。向こうはポストシーズンを含む実数で割っている

1人から売れる額は、クラブで16倍ちがう

平均の1217円は、どのクラブにも当てはまる数字ではない。 クラブごとに、1人あたりいくら売れているかを出すと、いちばん上と下で16倍ちがう。

図3入場者1人あたりの物販収入(39クラブ、円)

物販収入 ÷(平均入場者数 × ホーム試合数)。 棒の色は各クラブのクラブカラー。点線がリーグ平均の1217円。

宇都宮5,118円7.3億
琉球2,163円5.4億
千葉J2,048円6.2億
川崎1,869円2.5億
群馬1,827円2.8億
三河1,556円1.9億
島根1,511円1.4億
静岡1,463円1.1億
三遠1,347円1.8億
茨城1,310円1.3億
滋賀1,302円1.7億
富山1,200円0.9億
北海道1,103円1.9億
京都1,093円1.4億
鹿児島1,079円1億
A東京1,051円2.7億
秋田1,047円1.2億
東京SR1,039円1.2億
広島1,029円1.3億
仙台1,014円1.3億
福井983円1.2億
青森963円0.5億
越谷937円1.4億
神戸908円1.6億
A千葉856円1.4億
佐賀811円1.4億
長崎763円1.3億
横浜EX754円0.5億
奈良740円0.4億
横浜BC684円1億
熊本678円0.7億
大阪674円0.8億
名古屋D648円2億
FE名古屋647円0.5億
岩手640円0.4億
福島629円0.8億
愛媛375円0.2億
山形373円0.2億
福岡320円0.4億
指標1人あたりの物販 — 物販収入 ÷(平均入場者数 × ホーム試合数)(円)。ホーム試合数は実測
対象2025-26シーズン
備考
  • ⚠️ 分母はリーグ戦のホーム試合だけ。カップ戦やチャンピオンシップでの販売は分子に入るのに分母に入らないので、勝ち進んだクラブは高めに出る
  • オンラインでの販売も分子に入る。会場で売れた額ではない
  • 物販収入の会計処理はクラブによって違う(リーグの注記)。在庫や原価の扱いが揃っていない

先頭は宇都宮ブレックスの5,118円。 リーグ平均の4.2倍で、 物販収入7.3億円は営業収入の18.1%にあたる。 入場者数では13番目で、人を集めている順位と、売れている順位が一致していない。

下の側は320円前後で並ぶ。 ⚠️ ただしこれは「売る気がない」という話ではない。 会計処理の違い(委託販売にすると売上が総額で立たない)や、 オンラインの比率、アリーナに売り場が取れるかどうかで、数字は大きく動く。

ところで、「物販」に何が入るのかが分からない

⚠️ ここで、いったん足を止める必要がある。16倍という差を見せておいて言うのも何だが、 この比較はそもそも成り立っているのか。ここまで物販の数字を並べてきたが、リーグはこの項目の定義を公表していない。分かるのは、決算概要の様式に書いてある範囲だけになる。

様式から読み取れること
収入の科目入場料/スポンサー/物販/ユース・スクール関連/配分金/その他 の6つ。飲食という科目は無い
対になる費用物販収入に対応する費用は「グッズ販売原価(関連経費含む)」。物販=グッズ売上と読める
リーグの注記「物販収入・グッズ販売原価は、各クラブの販売方法および会計処理の方法が異なるため単純比較はできない」
別法人の扱い「トップチーム運営法人単体の数値である為、スクール事業やアリーナ事業等を別法人で行っている場合には、上記数値に含まれない事がある(別法人を有しているクラブ:仙台、群馬、琉球、横浜EX、八王子等)」

ここから、3つの穴が見える。

1つめ。会場の飲食がどこに入るのか分からない。専用の科目が無いので、クラブ本体が売っていれば「その他」に入ると読むのが自然だ。 ただしアリーナの運営が別法人なら、そもそもこの表に出てこない。 ⚠️ 推測であって、確かめられていない。

2つめ。グッズ付きのチケットや、グッズが付く会員グレードの扱いが揃っていない。リーグが「販売方法および会計処理の方法が異なる」と書いているのは、 おそらくここも含む。入場料に全部入れるクラブと、物販に割るクラブがあれば、 1人あたりの比較はその分だけ崩れる。

3つめ。別法人を持つクラブは、そもそも土俵が違う。リーグが名前を挙げている仙台・群馬・琉球・横浜EX・八王子などは、 アリーナ事業の売上がこの表に入っていない可能性がある。琉球ゴールデンキングスが1人あたり2,163円で2位につけているのは、別法人のぶんを除いてなお、ということになる。

飲食は、物販より天井が高いはずだ

科目が無いので数字では追えない。それでも、グッズと飲食は性質がまるで違うことは言える。

グッズは何度も使える。ユニフォームもタオルも、 一度買えば次は買わない。同じ人から繰り返し取れる額に上限がある。飲食はその場で消える。来るたびに買う。 1人あたりの天井は、飲食のほうがはるかに高い。

そしてここにアリーナが効いてくる。古い体育館では売店が1か所で、ビールも置けないことがある。 新しいアリーナは厨房を持ち、ラウンジを持ち、酒類を扱える。飲食は、売り場の作りで売上が決まる商品だ。

実際、アリーナを開けたクラブの「その他」収入は動いている。 ただし一様ではない。開業季に佐賀バルーナーズが4.0倍、琉球ゴールデンキングスが1.8倍、千葉ジェッツが1.7倍に増えた一方で、 長崎ヴェルカは0.4倍に減っている。

⚠️ これを「飲食の差」と読むことはできない。 「その他」には配分金以外のあらゆる収入が混ざり、 しかも別法人を持つクラブでは抜けている。飲食がいくらなのかは、いまの開示では誰にも分からない。リーグが科目を1つ足せば分かる、という話でもある。

定義が揺れていることを踏まえたうえで、それでも言えることを最後に書く。

筆者の見立て — 売り場は、席の数では決まらない

ここからは見立てになる。1人あたりの上位を見ると、席の多いクラブが並んでいるわけではない。宇都宮(4,754名)、琉球(8,322名)、千葉J(10,093名)と、 平均入場者数の順位はばらばらだ。

だとすれば、効いているのは席の数ではない。売り場の広さ、品数、並ばずに買えるか、そして「買って帰る理由があるか」のほうだろう。 最後のひとつは、勝敗でもアリーナでもなく、クラブが長い時間かけて作るものになる。

⚠️ これは数字から確かめたことではない。 上位クラブの売り場の作りを並べて比べれば確かめられるが、 この記事のデータではそこまで言えない。

確かめられていないこと

  • ⚠️ 1人あたりの分母はリーグ戦のホーム試合だけ。カップ戦や、オンラインで買った人は分母に入らない。会場での客単価そのものではない
  • 物販収入の会計処理はクラブで違う。自社で仕入れて売るか、委託にするかで、同じだけ売れても計上額が変わる
  • 原価を見ていない。売上が大きくても、利益が出ているかはこの数字から分からない
  • ⚠️ コロナの2季は分母が小さく、1人あたりが跳ねて見える。傾きを読むときはその2季を外す
  • 決算期がシーズンと一致しないクラブがある(A東京・東京SR・川崎・三河・FE名古屋・名古屋D・大阪・島根・長崎)。人件費と戦績の期間は厳密には揃っていない
  • 人件費はトップチームぶんのみ。スクールやアリーナを別法人で運営しているクラブは、その分が入らない
  • 物販収入と原価は、クラブごとに販売方法と会計処理が違うため単純比較できない(リーグの注記)
  • 「その他」にはアリーナ事業などの収入が入る。リーグはこれを「夢のアリーナ効果による増加」として、伸びた要因に数えている
  • 表示項目はリーグの統一様式で、クラブの決算書の勘定科目とは異なることがある。端数調整で合計が一致しない箇所がある(リーグの注記)

次に見るなら、どこか

次に会場へ行ったら、物販の列の長さと、売り場が何か所あるかを見てほしい。1人あたり5,000円が売れるクラブと、300円のクラブの差は、たぶんそこに出ている。

収入の構成全体は 10年の成長の記事、 クラブごとの数字は 財務データ にある。

出典:B.LEAGUE クラブ決算概要(2016-17〜2025-26シーズンの各季)/同 発表資料(2025-26シーズン)/B.LEAGUE マーケティングレポート 2025-26シーズン(入場者数)。