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決算クラブ経営入場料収入戦績2026.10.19

勝った翌季に、来場者は増えなくなった

10季292件のパネルで見る、戦績と入場料収入

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SUMMARYこの記事のポイント
  • 01強いクラブほど入場料収入は大きい。10季すべての季でプラスで、2025-26はB1 26クラブで相関0.651
  • 02ただし「勝った翌季に伸びるか」は別の問い。10季292件のパネルで相関0.150、無観客の季をまたぐ遷移を外しても0.181
  • 03黎明期(2016-17・2017-18起点の60件)は0.496で、95%区間0.277〜0.666。この時期には本当に効いていた
  • 04B.革新以降(2021-22起点の139件)は0.134で、区間は−0.033〜0.294。0をまたぐので、効いたとは言えない
  • 05クラブごとの平均を引いて「そのクラブにとって良い季」だけを取り出しても0.115(34クラブ・193件、区間−0.026〜0.252)
  • 06⚠️ 193件で5%有意になるのは相関0.14以上。「無関係」ではなく「あるとしても0.14より小さい」が正確

勝てば来場者が増える。そう考えるのが自然だし、半分は合っている。 2025-26のB1 26クラブで、勝率と入場料収入の相関は0.651だった。営業収入全体との相関(0.509)より強い。

ただ、そこから「勝ったから増えた」とは言えない。 前季からの伸びと勝率の相関は0.339しかなく、 入場料は26クラブ中19クラブで増えていた。

勝っているクラブほど、入場料は大きい

図1リーグ戦の勝率と入場料収入(B1 26クラブ、2025-26)

横がB1リーグ戦の勝率、縦が同じ季の入場料収入。 右上がりに散らばるが、同じ勝率でも縦に大きく開いていることを見てほしい。

0510152020%30%40%50%60%70%80%長崎宇都宮リーグ戦の勝率入場料収入(億円)
指標入場料収入 — クラブが1シーズンに得た、チケット販売による収入(億円)。勝率はB1リーグ戦のみで、カップ戦とチャンピオンシップを含まない
対象2025-26シーズン
備考
  • 相関係数は0.651。相関は「一緒に動いている」ことしか言わず、どちらが原因かは示さない
  • 決算期がシーズンと一致しないクラブがあり、勝率の期間と厳密には揃っていない

右上がりにはなる。ただ、この図は「いまの強さ」と「いまの規模」を並べただけだ。 強いクラブが大きいのか、大きいクラブが強いのか、ここからは決まらない。

今季の1年分だけを切り出しても、答えは変わらない

図4入場料収入の前季からの伸び(26クラブ、%)

両季に決算があるクラブだけ。 中央の縦線が増減ゼロ。棒の長さが変化率で、右が増、左が減。

レバンガ北海道+112.5%
アルバルク東京+80.8%
長崎ヴェルカ+61.7%
シーホース三河+58.3%
越谷アルファーズ+57.7%
東京サンロッカーズ+40%
大阪エヴェッサ+36.4%
仙台89ERS+35.5%
アルティーリ千葉+35.5%
滋賀レイクス+33.3%
千葉ジェッツ+29.5%
横浜ビー・コルセアーズ+17.6%
宇都宮ブレックス+14%
ファイティングイーグルス名古屋+12.5%
佐賀バルーナーズ+11.9%
群馬クレインサンダーズ+10.3%
富山グラウジーズ+6.7%
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ+5.1%
広島ドラゴンフライズ+4.5%
京都ハンナリーズ+0%
琉球ゴールデンキングス-0.7%
三遠ネオフェニックス-5.6%
秋田ノーザンハピネッツ-6.5%
茨城ロボッツ-9.1%
川崎ブレイブサンダース-9.5%
島根スサノオマジック-28.9%
指標入場料収入の伸び — 前季に対する増減率(%)。(今季 − 前季) ÷ 前季
対象2024-25 → 2025-26
備考
  • 両季とも決算を公開しているクラブだけを並べている。片方しか無いクラブは図に出ない
  • 棒の長さは、いちばん大きい変化を基準にそろえてある。絶対額ではなく率

26クラブ中19クラブが増え、中央値は+13.3%だった。 勝率との相関は0.339で、前の図の0.651よりはるかに弱い。

つまり、伸びたのは勝ったクラブだけではない。勝率が5割に届かなかった季でも、入場料を増やしたクラブがいる。 入場料は1季の勝敗より、席数と単価と日常の集客で決まっている。

水準の関係は、10季ずっとプラスだった

まず、いま見た関係が今季だけのものかを確かめる。各季の相関を10季分並べると、全部プラスだった。いちばん低い2016-17でも0.238、高い季は0.741ある。 強いクラブほど入場料が大きい、という関係自体は動いていない。

図2各季の「勝率 × 入場料収入」の相関(B1、10季)

縦が相関係数。細い縦線は95%信頼区間で、長いほどクラブ数が少なく推定が粗い。 0の線を下回った季が1つも無いことを見てほしい。

00.250.50.7510.23816-170.54217-180.72218-190.74119-200.58320-210.60221-220.65322-230.41923-240.56624-250.65125-26縦軸:相関係数横軸:シーズン
指標相関係数 — その季にB1にいたクラブの、リーグ戦勝率と入場料収入のピアソン相関。95%信頼区間はFisherのz変換による
対象2016-17 〜 2025-26
備考
  • クラブ数は17から26に増えている。少ない季ほど区間が長く、推定が粗い
  • 相関は「一緒に動いている」ことしか言わず、どちらが原因かは示さない

勝った翌季に増えたのは、2018年までの話だった

ここからが本題になる。「強いクラブは大きい」と 「勝った翌季に増える」は、別の問いだ。前者は、昔から強くて昔から大きいだけでも成り立つ。 後者を見るには、勝率と「その翌季の伸び」を並べないといけない。

10季分のクラブ×季を全部つないで292件にすると、相関は0.15だった。 無観客のあった季をまたぐ遷移を外しても0.181。水準の0.651に比べて、はるかに弱い。

図3勝率(その季)と入場料収入の伸び(翌季)の相関

遷移ごとの相関。細い縦線は95%信頼区間で、0をまたいでいる季は「効いたと言えない」。 左の2つだけが高く、右側は0のまわりに落ちていることを見てほしい。

-0.5-0.2500.250.50.750.5516-17→0.46317-18→0.10618-19→-0.13919-20→0.21820-21→0.24221-22→0.24122-23→0.28323-24→-0.21224-25→塗りつぶしは「0をまたがない=効いたと言える」遷移。左の2つだけ中空は区間が0をまたぐもの。破線は無観客のあった季をまたぐ遷移縦軸:相関係数横軸:どの季から翌季へ
指標相関係数 — その季のリーグ戦勝率と、翌季の入場料収入の伸び((翌季 − 当季) ÷ 当季)のピアソン相関
対象2016-17 → 2017-18 から 2024-25 → 2025-26 までの9つの遷移
備考
  • B1とB2の両方を入れている。勝率の水準はディビジョンで違うが、ここで見ているのは「そのクラブにとって良い季だったか」と「翌季に伸びたか」の対応
  • 灰色の3つは無観客・中止のあった季をまたぐ遷移。興行が止まっているので、勝敗とは無関係に入場料が落ちている
  • 区間が0をまたぐ遷移は、効いたとも効かなかったとも言えない

分けて数えると、はっきりする。黎明期(60件)は0.496で、95%区間は0.277〜0.666。 0をまたいでいない。勝てば翌季に増える、はこの時期には本当だった。

ところがB.革新以降(2021-22起点・139件)は0.134で、 区間は-0.033〜0.294。0をまたぐ。効かなくなった、というより、この標本では見えなくなった。

同じクラブの中で見ても、やはり見えない

クラブをまたいで比べると、もともと大きいクラブの事情が混ざる。 そこでクラブごとの平均を引いて、「そのクラブにとって良かった季」だけを取り出した。3季以上そろう34クラブ・193件で見る。

結果は0.115、95%区間は-0.026〜0.252で、やはり0をまたぐ。 自分のクラブがいつもより勝った季の翌年に、入場料がいつもより伸びる—— という形は、データからは出てこない。

⚠️ ここは慎重に書く。193件で5%有意になるのは 相関が0.14以上のときで、それより小さい効果はこの標本では見えない。「勝敗は入場料と無関係」ではなく、「あるとしても0.14より小さい」が正確な言い方になる。

筆者の見立て — 席が埋まりきって、勝敗の効き目が消えた

ここからは見立てになる。黎明期に効いて、いま効かない。 この変化を説明できる筋は2つあると考えている。

1つは席が埋まったから。 リーグ平均の入場者数は1,985名から4,379名へ2.2倍になった。 空席が多いうちは、勝てばその空席が埋まる。埋まりきったあとは、 勝っても売る席が無い。伸びしろが勝敗の外へ移った、という読み方だ。

もう1つは伸びの主因が入れ替わったから。 入場料収入は「人数 × 単価」で、この10年で単価のほうが大きく動いた (入場者単価は1,816円から4,467円へ2.5倍)。 単価を決めるのはアリーナの席種とホスピタリティで、 どちらも勝敗ではなく投資で動く。

どちらが主かは、この記事のデータでは決められない。 ⚠️ ただし両方とも、「勝っても客は増えない」という話ではない。水準の相関は10季ずっとプラスのままで、強いクラブは大きいままだ。 変わったのは、1季勝ったことが翌季の伸びに現れるかどうかのほうになる。

確かめられていないこと

  • 新アリーナの開業や値上げを分けていない。伸びの多くはそちら側かもしれない。切り分けるには開業季を押さえた別の検証が要る
  • 入場料収入しか見ていない。入場者数そのもののクラブ別の推移は、こちらが10季分持っていない
  • B1とB2を一緒に数えている。勝率の水準がディビジョンで違うので、分けると結論が動く可能性がある
  • 「黎明期は効いた」の根拠は60件で、2つの遷移しかない。クラブ数も少ない時期なので、推定は粗い
  • 決算期がシーズンと一致しないクラブがある(A東京・東京SR・川崎・三河・FE名古屋・名古屋D・大阪・島根・長崎)。人件費と戦績の期間は厳密には揃っていない
  • 人件費はトップチームぶんのみ。スクールやアリーナを別法人で運営しているクラブは、その分が入らない
  • 物販収入と原価は、クラブごとに販売方法と会計処理が違うため単純比較できない(リーグの注記)
  • 「その他」にはアリーナ事業などの収入が入る。リーグはこれを「夢のアリーナ効果による増加」として、伸びた要因に数えている
  • 表示項目はリーグの統一様式で、クラブの決算書の勘定科目とは異なることがある。端数調整で合計が一致しない箇所がある(リーグの注記)
  • ⚠️ 「効かなかった」は「無関係」ではない。この標本で検出できなかった、というだけ

次に見るなら、どこか

次の試合、席の埋まり方を見てほしい。その日の入りは、勝敗よりも長い時間の積み重ねを映している。人件費と勝率の関係は 別の記事、 クラブごとの数字は 財務データ にある。

出典:B.LEAGUE クラブ決算概要(2016-17〜2025-26シーズンの各季)/同 発表資料(入場者数・入場者単価)/勝敗は B.LEAGUE 公式の試合記録から集計。