1季4万キロと8千キロ。それでも勝率は変わらなかった
10季の振り返りと、今季ここまで
- 0110季で日程は変わった。水曜開催は33試合から184試合へ5.6倍、金曜は74試合から26試合へ。平日の試合は「金曜から水曜へ」移った
- 02⚠️ ところが今季(2026-27)は様変わりした。組まれた日程の平日率は34.5%でほぼ倍。金曜が戻り、月曜・火曜・木曜にも試合が入る
- 03変えたのは B.PREMIER だけ。平日率48.7%で土日は46%しかない。B.ONE は19.4%で昨季とほぼ同じ
- 04開幕から10月20日までの211試合では平日26.1%。平日の試合は季の後半に厚く置かれていて、11月60%・2月64%になる
- 051クラブあたりの推定移動距離はリーグ平均で11,673kmから15,151kmへ1.30倍
- 06負担は等しくない。2025-26は琉球ゴールデンキングスの40,123kmに対し、川崎ブレイブサンダースは8,286km。4.8倍の差
- 07ところが勝敗に出ない。クラブ×季335件で、総移動距離と勝率の相関は0.017(95%区間 −0.095〜0.13)
- 08アウェイ8,684試合を直前の移動距離で分けても、勝率は45.2%〜49.1%で信頼区間が重なる。中◯日でも連続アウェイの戦目でも同じ
- 09⚠️ 「無関係」ではない。移動なしと1200km超の差は2.0ポイントで、この標本で有意になるには5.8ポイント要る。あっても、それより小さい
- 10⚠️ 移動距離は推定。本拠地どうしの大圏距離で、実際の経路でも空港までの距離でもない
沖縄から北海道へ飛んで、翌週は九州。 日程表を見ていると、クラブによって負担がまるで違うことに気づく。では、それは勝敗に出ているのか。
10季14,509試合ぶんの日程から、1クラブずつ移動距離を数えた。 差は想像より大きかった。そして、勝率には出てこなかった。
平日の試合は、金曜から水曜へ移った
まず日程そのものがどう変わったか。 平日に行われる試合の割合は2016-17の13.4%から2026-27の26.1%へ増えた。 ただし中身を見ると、増えたというより移っている。
図1曜日ごとの試合数(B1+B2のリーグ戦、2016-17 と 2026-27)
薄い棒が2016-17、濃い棒が2026-27。水曜が伸びて、金曜が縮んでいることを見てほしい。
- クラブ数が増えているので総試合数も増えている(1080→199)。曜日ごとの比較はその点を割り引いて読む
- ⚠️ 延期して振り替えた試合も、振り替え後の日付で数えている
水曜は33試合から20試合へ0.6倍。 金曜は74試合から18試合へ減った。平日の試合が増えたというより、平日枠が金曜から水曜に引っ越した。 土日の2連戦に、週の真ん中の1試合が挟まる形になっている。
今季、週末集中が崩れた
ここまでは2025-26までの話だった。今季(2026-27)、その傾向が変わる。B.革新でリーグの名前と編成が変わり、日程の組み方も変わった。
組まれている1,518試合のうち、平日は34.5%。昨季の26.1%からほぼ倍になった。しかも中身が違う。金曜が18試合から146試合へ戻り、 月曜・火曜・木曜にも試合が入るようになった。
図4曜日ごとの試合数(2026-27の実績と、2026-27の日程)
薄い棒が2026-27、濃い棒が2026-27。土日が削られ、週の全部に散ったことを見てほしい。
- ⚠️ 2026-27は日程であって実績ではない。延期や振り替えで動く
- 総試合数が増えている(199→1518)。構成比で並べているのはそのため
- B.NEXT(旧B3)は両季とも含めていない
変えたのは B.PREMIER だけ
リーグで分けると、絵が変わる。B.PREMIERの平日率は48.7%。B.ONEは19.4%で、 昨季とほとんど変わっていない。週末集中をやめたのは、上のリーグだけだった。
B.PREMIERは土日が51%しかない。週の半分近くが平日の試合という日程になっている。 放映枠を分散させたのか、アリーナの稼働を上げたのかは発表されていないが、移動と休養の条件は、昨季までと別物になる。
ここまでの211試合は、まだ週末寄り
では、実際に始まってどうか。2026-27の開幕から10月20日までに消化されたのは211試合で、 そのうち平日は26.1%。季全体の予定34.5%より低い。
月ごとに見ると、理由が分かる。 B.PREMIERの平日率は開幕の9月が35%で、11月に60%、 2月に64%まで上がる。平日の試合は、季の後半に厚く置かれている。
図5B.PREMIER の月ごとの平日率(2026-27、%)
濃い棒が消化済みの月。点線が季全体の48.7%。これから平日の比率が上がることを見てほしい。
- ⚠️ 予定であって実績ではない。延期や振り替えで動く
- 10試合未満の月(開幕前後と最終月)は図から外している
- ⚠️ なぜ特定の月に寄せているかは発表されていない。代表ウィンドウや放映の都合が考えられるが、確かめていない
つまり今季の負担は、まだ本番を迎えていない。この記事で見た「移動は勝敗に出ない」は2025-26までの話で、 週の半分が平日という日程では条件が変わる。その検証は、季が終わってからになる。
1季で地球1周ぶん動くクラブがある
日程が詰まれば、移動も増える。 各クラブの試合を日付順に並べ、本拠地と会場のあいだの距離を足していった。リーグ平均は2016-17の11,673kmから2025-26の15,151kmへ、1.30倍になった。
図41クラブあたりの推定移動距離(km・リーグ戦のみ)
線が平均、上の点がその季いちばん長いクラブ。 いちばん上の点は、地球1周(約40,000km)に届く年がある。
- ⚠️ あくまで推定。実際の経路(飛行機・新幹線・バス)でも、空港までの距離でもない
- ⚠️ 「間が3日以上空いたら一度本拠地へ帰る」という仮定を置いている。実際の遠征日程は公表されていない
- ⚠️ カップ戦・チャンピオンシップ・代表ウィンドウの移動は入っていない。実際の移動はこれより多い
- 本拠地の座標は2026-27のもの。移転したクラブは過去の季も現在地で計算している
負担は等しくない。いちばん軽いクラブの4.8倍
平均の話は、ここでは意味が薄い。2025-26でいちばん長いのは琉球ゴールデンキングスの40,123km。 いちばん短いのは川崎ブレイブサンダースの8,286kmで、4.8倍の差がある。
図52025-26の推定移動距離(39クラブ、km)
棒の色は各クラブのクラブカラー。点線がリーグ平均の15,151km。 上位に並ぶのは、地理的に端にあるクラブだ。
- 試合数がクラブで違う(B1は60試合、B2も60試合だが延期の扱いで前後する)
- ⚠️ この順位は地理の結果であって、クラブの努力や経営とは関係がない
ここまでなら、話は分かりやすい。 端にあるクラブは余計に動いていて、その分だけ不利なはずだ。ところが、ここから先が思ったとおりにならない。
ところが、勝敗には出てこない
アウェイ8,684試合を、その試合の直前にどれだけ移動したかで分けた。 移動が効いているなら、長く動いた試合ほど勝率が下がるはずだ。
図6直前の移動距離ごとの、アウェイ勝率(%)
太い点が勝率、細い帯が95%信頼区間。縦線がアウェイ全体の47.4%。どの帯も縦線をまたいでいることを見てほしい。
- 95%信頼区間は二項比率による。件数が少ない帯ほど長くなる
- ⚠️ 相手の強さを調整していない。たまたま強い相手との試合が遠征に偏っていれば、その分が入る
同じことを、休養日と連戦でもやった。どちらも、はっきりした傾きが出ない。
図7休養日ごとの、アウェイ勝率(%)
図8連続アウェイの何戦目かごとの、アウェイ勝率(%)
- ⚠️ 「中1日」は78試合しかないので図から外した。土日連戦と週中の1試合という形が多く、中1日はほとんど組まれない
- 連続アウェイの判定は「3日以上空いたら帰る」という仮定に依存する
季をまたいで見ても同じだった。クラブ×季303件で、その季の総移動距離と勝率の相関は0.017。 95%区間は-0.095〜0.13で、0をまたぐ。たくさん動いた季に勝てなくなる、という形は出てこない。
「無関係」ではなく「あっても小さい」
⚠️ ここで言い過ぎないようにする。出てこなかったのは「効果が無い」ことの証明ではない。 この標本では見えない、というだけだ。
どこまで言えるかを数える。 移動なしの試合と1200km超えの試合で、勝率の差は2ポイントあった。 ただしこの件数で5%の有意になるには5.8ポイント要る。観測された差は、その半分にも届かない。
季の単位でも同じで、相関の95%区間は-0.095〜0.13だった。 つまり「移動は勝敗と無関係」ではなく、 「あるとしても、相関0.13より小さい」が正確な言い方になる。303件あってこの幅なので、これ以上細かい効果を見るには、 別の設計(相手の強さを揃える、移動手段を分ける)が要る。
筆者の見立て — 効いていないのではなく、クラブが先に手を打った
ここからは見立てになる。4.8倍の差があって勝率に出ないのは、クラブ側がすでに手を打っているからだと考えている。
遠いクラブほど、前日入りを早め、移動手段に金を使い、日程に合わせて練習を組む。負担が大きいと分かっているものには、対策が立つ。その費用は決算の「試合関連経費」に乗っているはずで、 この項目が10年で増えている ことと向きは合う。
⚠️ これは確かめていない。クラブ別の移動費は開示されていないので、 「遠いクラブほど試合関連経費が重い」かどうかは、いまのデータでは見られない。勝敗に出ないことと、負担が無いことは違う。出ていないのは、どこかで誰かが吸収しているからかもしれない。
確かめられていないこと
- ⚠️ 移動距離は推定。本拠地どうしの大圏距離を足したもので、実際の経路でも空港までの距離でもない
- ⚠️ 「間が3日以上空いたら一度本拠地へ帰る」という仮定を置いている。実際の遠征日程は公表されていない
- ⚠️ 本拠地の座標は2026-27のもの。移転したクラブは過去の季も現在地で計算している
- ⚠️ カップ戦・チャンピオンシップ・代表ウィンドウの移動は入っていない。実際の移動はこれより多い
- ⚠️ 相手の強さを調整していない。遠征先が強いクラブに偏っていれば、その分が勝率に入る
- 移動手段を分けていない。同じ500kmでも、飛行機とバスでは疲れ方が違う
- 選手の出場時間や負傷を見ていない。移動の影響が勝敗ではなく、故障や出場時間に出ている可能性がある
- ⚠️ 「効かなかった」は「無関係」ではない。この標本で検出できなかった、というだけ
次に見るなら、どこか
応援しているクラブの日程表を、移動の順に読んでみてほしい。土日の2連戦のあと、水曜にどこへ行くのか。そこがこの10年で増えた枠で、クラブがいちばん工夫しているところになる。
出典:本サイトの試合データベース(B.LEAGUE 公式の日程・試合記録から、2016-17〜2025-26のB1・B2リーグ戦)/本拠地の座標は B.LEAGUE 公式クラブページの住所から算出。