「5,000席」は、126ある要件の1行でしかない
Bプレミアのアリーナ基準といえば5,000席だ。 検査要項を開いて数えたら、「5,000席以上の観客席数を有する」はこの文書に1回しか出てこない。 ◆で示された基準要件は126ある。残りの125が求めているのは、建物の大きさではなかった。
- 01「5,000席以上の観客席数を有する」は、36ページ・126項目の検査要項に1度しか出てこない1行
- 02席数はクラブが独自に施工・設営する仮設席やイス席、消防が認可した立見席(入場可能数の10%まで)まで算入する。建物に付いている席だけの数ではない
- 03コンコースを土足で歩けることが★★★の条件。代替アリーナの要項では、施設の利用規約に観客席での飲食禁止があれば、施設側との協議による改善を求めている
- 04要項の末尾に島田慎二チェアマンの署名入り補足があり、クラブが経営力をつけ長期投資できる環境を作ることが目的だと書かれている
「5,000席」は、この文書に1回しか出てこない
B.LEAGUE は規程を公開している。アリーナの条件はホームアリーナ検査要項という文書にまとまっていて、 B.PREMIER クラブライセンス交付規則 第18条[ホームアリーナ基準]を満たすために何が要るかを、項目ごとに並べてある。 A4で36ページある。
冒頭の1行目が「◆5,000席以上の観客席数を有する」。 そのあと、125の要件が続く。
図1126の基準要件のうち、席数は1つ
- 数え方: PDFのテキストから「◆」で始まる要件を数えた。126件。うち4件は固定席と可動席それぞれに同じ条件を課すもので、表の上では別の行になっている
- ⚠️ 1件あたりの重さは同じではない。席数の1件と、スコアボードの1件を同列に並べた図ではない
- ⚠️ 各要件には「2024年審査時」「2026年以降審査時」の2列があり、どちらで効くかは項目ごとに違う。この図は列を区別していない
数の比に意味を持たせすぎるつもりはない。席が無ければ始まらないのだから、1行でも重い。 ただ、残り125行が何を書いているかは、ほとんど話題にならない。 読むと、審査が見ているものの輪郭が変わる。
席は、クラブが持ち込んだ分まで数える
席数の1行には、数え方が添えてある。 建物に付いている席だけではない。クラブがその日のために組み立てた席も、数に入る。
図2入場可能数に算入できるもの、できないもの
席1つにも条件がある。すべての座席からコートが見渡せること。 幅は1席あたり400mm以上。 チケットに書かれた番号と同じ表示が席に付いていること。 固定席は独立したイスで、背もたれが付いていること。
つまり「5,000席ある」は、建物の性質ではない。 消防の認可を取り、仮設席を組み、立見のマニュアルを出して、席に番号を貼る。 その積み上げが席数になる。では、残りは何を求めているのか。
土足で歩けないなら、養生してでも歩けるようにする
要項の中ほどに、こういう1行がある。
観客席エリア内コンコース及び通路は、土足での利用が可能である(施設としてもしくは運営上養生することで可能な場合も含む)
日本の体育館は、土足禁止のところが多い。 競技用の床を守るための運用で、それ自体に理由がある。ただ、入口で靴を脱ぐ場所では、興行としての動線が作れない。要項はそこを★★★、つまり具備しなければならない条件として置いている。
同じことが、トイレにも及ぶ。入場可能数の3%が同時に使える規模であること (5,000人まで。5,000人を超える分は必須2%・推奨2.5%)。 救護室には医師と看護師を置く。当日券売り場の前には、並んだ人が安全に待てる広さを取る。 総合案内所では、落とし物と迷子の窓口を1か所に集める。
客席の配置図とコートまわりの配置図は、ホームゲームの前にリーグへ出して承認を受ける。 承認を受ける図面には、ゴール器具の位置も、スイーパーの待機位置も、 囲み取材をするスペースも書く。
図3検査要項が見ているもの
- PDFの「検査項目」欄に出てくる見出しを読み取って分類したもの。分類の名前は当サイトが付けた
- ⚠️ 全項目ではない。各見出しの下にさらに複数の要件がある
もう1つ、別の文書に踏み込んだ条文がある。 新設や改修の計画はあるが今季は使えない、というクラブ向けの代替アリーナ検査要項だ。 その最後の章は、施設が主催者に順守を求める利用規約そのものを見ている。 観客席での飲食が禁止されていたら、施設の管理者・所有者との協議による改善が求められる。 理由として「観客サービスの品質を向上するための妨げとなるため」と書いてある。 アリーナ面以外の通路で土足が禁止されていた場合も同じで、こちらの理由は 「運営効率を低減したり、運営コストの上昇を余儀なくされる要因となるため」。
体育館を借りて試合をする、のではない。その建物を、試合を見せられる場所に作り替える。審査が確かめているのは、それができているかどうかだった。 では、なぜそこまで見るのか。
要項の最後に、署名入りの補足がある
36ページの最後、警備体制の次に、島田慎二 審査委員長・チェアマンの名前で補足が置いてある。 検査の条文ではなく、なぜこの基準を作ったかの説明だ。
2026年の構造改革「B.革新」は、B.LEAGUE が「バスケで日本を元気に」を実現するため、また、クラブがステークホルダーや地域の皆さまを幸せにできる存在となるためには、クラブが今以上に経営力をつけ、長期的視野で成長のための投資を行うことができる環境を作ることが不可欠と考えています。
順番が書いてある。クラブが地域やステークホルダーを幸せにできる存在になる。 そのために経営力と、長期で投資できる環境が要る。アリーナの基準は、その環境のほうに置かれている。
同じ補足に、推奨要件としてサステナビリティが挙がっている。 環境認証の取得と環境アセスメントの実施で、参考として ZEB・WELL・LEED・CASBEE の4つが示してある。 別のところでは、国交省の避難所運営ガイドラインを守れること、災害用備蓄倉庫を置くことなど、周辺地域の防災拠点になる機能が推奨要件として書かれている。
要項の冒頭には、ホスピタリティについて別のガイドラインを参照するよう書いてある。 「アリーナエンターテインメント」「スポーツを通した地域活性化」「バスケで日本を元気に」という理念に向けて、 さまざまな人々を「つなぐ」場にふさわしいアリーナを作ってほしい、という趣旨だ。 ⚠️ そのガイドライン本体は、こちらでまだ読めていない。
次に会場へ行ったら、足元を見てほしい
靴のまま入れるか。座席に番号が貼ってあるか。コートまわりにパイプ椅子が何列組んであるか。 入口のそばに当日券売り場があるか。総合案内所の看板が出ているか。そのどれもが、要項に書かれた項目だ。
会場に着いてから席に座るまでの数分で、審査項目の半分近くは目に入る。 そう思って見ると、同じ体育館が去年と違って見えることがある。 仮設席が増えていたり、コンコースに養生が敷かれていたり、案内の人が増えていたりする。 それは建物が変わったのではなく、クラブがその日のために組み立て直しているということだ。
公表されている収容人数のほうは、クラブごとに数えているものが違う。 そちらは席はどこも数えている。同じ物差しではないにまとめた。 各クラブのアリーナと平均来場者数はアリーナのページにある。
確かめられていないこと
- 別添の「B.LEAGUE アリーナホスピタリティ推奨ガイドライン」は取得できていない
- 2027-28用・2028-29用の検査要項も公開されている。季ごとに条件が動く可能性があるが、ここでは2026-27用だけを読んだ
- 各要件が「2024年審査時」と「2026年以降審査時」のどちらで効くかは項目ごとに違う。本文では、どちらかで★★★が付いているものを「求められている」として扱った
- 実際の審査でどこまで厳密に見られるか、未充足のときにどう扱われるかは、この文書からは分からない
規程はすべて B.LEAGUE「定款・規約・規程」から辿れる。